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ドナー体験記

「ドナー体験記〜若手外科医としてできること〜」

 こんにちは。TAKAといいます。日時は言えませんが、骨髄提供したのはしばらく前のことです。普段は総合病院で若手外科医として働いています。血液とは異なりますが、臓器移植に携わることもあります。私のドナー体験は他の方と違ってかなり特殊な環境で行われたと思います。優遇された部分もあると思いますし、そうでない部分もあると思います。自分の医療について考え直す良いキッカケにもなりましたし、このようなケースもあるのだと知っていただければと思います。

「ドナー登録」

 登録したのは医学生の時でした。学生でもできる社会貢献として通っていた献血ルームで、ある日骨髄バンクのポスターを見たのがキッカケです。受付に訪ねて、献血前採血と追加でHLA採血をすることで登録できると聞き、登録しました。学生の時、同級生に適合の通知が来た友人がいましたが、親の反対でできなかったことを聞きました。同様に、家族の反対や仕事の都合で適合しても提供までこぎつけない方が多いことも知りました。

「ドナー適合通知」

 外科医として中心的に手術を執刀することも増え、ドナー登録をしたことも忘れたある日、突然オレンジ色の封筒が来ました。この封筒が来たときのことは私にとって特別な意味を持ち、鮮明に覚えています。完全に個人的なことですが、結婚を約束していた彼女に裏切られた2日後のことでした…。これまで自殺なんて考えたことありませんでしたが、人生に絶望して初めて自殺を考えていたところ、ドナー登録して10年、初めてのドナー適合通知がやってきたのでした。実際に通知が来たら悩むかも、とかつては思っていました。しかし、その時は自分の骨髄が誰かの命をつなげられることが無性に嬉しく、提供を即決しました。

「家族の同意、提供前検査」

 提供を決めたとはいえ、職場の理解、両親の理解を得られるかどうかが心配でした。外科は緊急手術も多く、自分一人が抜けることで他の先生の負担が増えます。診療科長に相談すると、「素晴らしいことだから、応援するよ。」とお返事をいただき、入院期間のオンコール(急患対応の当番)を外していただくなど配慮いただきました。

 医療人ではない両親は当初正直言って「メリットのない骨髄提供」にはすごく反対でした。「人の役に立つのも大事なことだけど、もっと自分の体を大事にして欲しい。リスクしかないことをしなくてもいいじゃない。」などと言われました。遠方の両親への説明をしてくださった先生が、たまたま研修の時にお世話になった血液内科の先生であり、説明を聞いて安心して同意してくれました。

 幸いなことに私の勤めていた病院は骨髄移植の指定病院であり、職場での手術を希望し、血液内科の先生との面談、検査、自己血採血は仕事の合間に行うことができました。一般の方は仕事を休んで病院へ行かなければならないことを考えると、すごく恵まれていたと思います。

「入院、骨髄採取」

 骨髄採取は金曜日の午前中とのことで、前日の木曜日に業務が終わってからそのまま夕方に入院しました。病室は個室ではありますが、古い病棟の一番狭い病室でした。担当は「先生にいろいろ教えてもらいなさい。」と、新人の看護師さんでした…。

 自分の受け持ち患者さんに悟られないよう、金曜日の朝はいつも通り患者さんの回診を行い、カルテ記載や処方をしてから自分の病室に戻りました。血液内科の病棟の看護師さんは患者さんを連れて手術室に行く「オペ出し」の機会が少ないようで、先輩看護師さんから「先生にオペ出しを教えてもらいなさい(笑)」と放たれた新人看護師さんとともに病棟を出ました。私の場合は連れていかれる、というより連れて行った感じです。雑談しながら手術室へ向かい、手術室へ入る作法を教え、気の知れたオペ室看護師さんへ引き継がれました…というか引き継ぎました。セルフオペ出しです(笑)

 毎日のように全身麻酔の手術をしていますが、自分が全身麻酔を受けるのは初めてのことでした。鎮静剤のプロポフォールを静脈注射されてすぐから記憶はありません。覚醒して病棟に戻るはずですが、はっきりと意識を取り戻して気が付いたのは手術が終わって3時間後くらいでした。短い手術では尿道バルーンカテーテルを入れない傾向の病院でしたので、バルーンが入っていないことにすごくホッとしました。ヘモグロビンが3g/dLくらい下がってフラフラするのと、腰が痛くてたまらなかったです。その日は点滴もあるため、部屋でじっとしていました。提供自体はひっそりしたかったので診療科内の医師にしか言っていませんでしたが、同僚や外科病棟の看護師さんたちがお見舞いに来てくれました。採取当日は点滴もつながっていたため、受け持ち患者さんたちへの夕方の回診は諦めました。そして、コーディネーターさんから自分の骨髄がきちんと患者さんへ届いたことを聞き、安堵しました。

 土曜日の昼頃に点滴が終了しました。受け持ち患者さんの回診を行って、腰も痛くて動くのが億劫だったため、その日はひたすら漫画を読むなどしてダラダラと過ごしました。

 日曜日の朝、いつも通りの回診を終え、病室に戻って退院の運びとなりました。自宅までの交通機関が脆弱でしたが、公共交通機関のみの利用が認められていました。退院当日は大雨で、1人で入院の荷物を持って傘をさして歩くのは辛かったなあ、と覚えています。 そして月曜日から手術を執刀し、日常に戻りました。

「後診察、感謝状」

 術後、しばらくは腰が痛かったです。これは個人差があると思います。この痛み自体は2週間程度でだいぶおさまりましたが、長く椅子に座ると痺れたような痛みが走る症状が半年くらい続きました。ちょっとnervousになっていましたが、今ではその症状もなくなって良かったです。そして忘れたころに厚生労働大臣からの感謝状が届きました。献血回数で県知事から感謝状をいただいた以来の感謝状です。記念として大切に保管しています。

「提供してみて」

 柄にもなく絶望していたときに来た適合通知でしたが、それに救われた部分もあります。誰かの生きる希望になれる素晴らしさを実感し、移植医療の可能性・重要性について再度認識させられました。また、日常に診療に戻ってみると今まではあまり気づかなかった、自分を認めてくれる先輩医師、自分を頼りにしてくれる看護師・後輩医師、外来に来るのが楽しみと言ってくれる患者さんたちがこんなにもたくさんいてくれたのだと気づかされました。

 骨髄提供を行って、誰かの笑顔を増やすための医療という初心に帰ることができたような気がしました。私の骨髄を移植された患者さんには、治療が奏功することを願うとともに、提供の機会を頂いてむしろ感謝しています。

「最後に」

今後の骨髄提供についての改善点や希望
■ドナーの休業補償・特別休暇など
ドナーに対しての提供に伴う休業補償は自治体ごとに格差が大きいようです。私の受けた地域では何もなく、金曜日のみ有給休暇を消費しました。私の場合は仕事の合間に融通していただいた部分が大きいですが、多くの方はドナーの負担が大きいと思います。通院・入院にかかる期間の休業補償や特別休暇とするなど、全国一律の対応が望ましいと思います。
■独身者で家族が遠方の場合の交通費など
私の母は「入院に付き添おうか?」と言ってきましたが、無償の提供をする側が多額の交通費・宿泊費を払うのはなんだかなぁと思って断りました。私は慣れたところで特に不安もありませんでしたが、付き添う家族への何らかの助成制度があればなあと思います。
■尿道バルーンカテーテル
外科医としても短時間の全身麻酔手術では尿道バルーンカテーテルは不要だと思います。しかもドナーは提供に見合う健康状態なので、あまり必要性を感じません。体験談を拝見すると病院の方針によりますが、ドナーの負担を減らす方向で基本的に一律なくして欲しいと思います。
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